犬が死んだ 名前をペロといった ぼくが名前をつけたのだ 10年前段ボール箱に入ってやってきたお前 バイクに乗ってつとむ兄さんが連れてきたお前はぼくの手をよくなめた ぼくも10歳の少年だった つとむ兄さんが死んだとき、お前はなぜ分かったのか 幼いお前には兄さんが見えているようだった どこかのバイクが通ると、お前は必ず小屋から出てしっぽを振った 決して帰ることのないつとむ兄さんをずっと待ち続けていた だが やっとお前も 兄さんと会えるのだね こんなことになるのだったら もっとたくさんお前と遊んでおくのだった しかし許してくれ ぼくは何もしてやれなかった それどころか お前のエサの世話も 散歩も あまりしてやれなかった そして今は遠く離れて お前の埋葬すら見てやれない おお、 死の前では どんな後悔も どんな慰めも どんな夢さえも 全く無意味なのだ しかしそれではあまりにつらいから 人はあの世を夢想するのだ でも、 それでもぼくは言わずにはいられない ペロ つとむ兄さんによろしく