アルジャーノンに
1992年12月頃


	ただ力無く
	部屋のエントロピーはますます増大し
	ぼうけんをする気力どころか
	日々を生き延びるのにせいいっぱいだ
	アルジャーノンの末期のように日々痴呆になっていく

	「クローン病ってなに?」

	子供の頃のわたしが聞く

	これはわたしの業なのだろうか
	業の病
	たしかに人より業が多いかもしれないが
	せいさんするには早すぎませんか
	ぼくはまだ21なんだよ

	一生ひきずることになるのか
	爆弾をはらにかかえたまま
	こんなはずでは
	こんなはずでは

	けんらんたる未来

	自分にむち打つことすらできない
	所詮この程度
	弱い
	しれんは始まったばかりだというに
	なんという弱さ
	ノイズか
	結局


	 ちきゅうの
	 くるしみを
	 しっているのか
	 よだんなくつづく
	 うみのくるしみを


	精神的苦痛が物理的苦痛となって具現化する
	前に進むことが恐ろしくてできない
	よりによって胃にこなくてもよかろうに
	人間という生物の最大の欠陥だ
	もっともぼくの場合
	入り口から出口まで全てぼろぼろだが

	恐ろしいのは腸閉塞というやつだ
	死よりもつらい苦しみ
	それだけはご勘弁を
	いつかは手術を?
	本当に治らないのですか?

	熱よ下がれ
	食いもんを食わせろ
	いちいち痛むな
	うっとうしい
	体なんて無くていい
	本当に?

	食欲・性欲なしで生きていけるか?
	ふん、今でも似たような状態だというのに

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