突発的記憶再生
1998年6月17日


	あれから
	 1年が経った
	 退院してから
	 半年が経った
	 

	1年前の今頃
	 ぼくはICUのベッドの上で
	 自分がスターになったと確信し
	 変な夢をいっぱい見ていた
	 看護婦さんが自分の面倒を見てくれるのは
	 ぼくが有名人だからだ

	 高熱と痛みと麻酔と死臭の中で
	 唯一楽しみにしていたのは
	 氷水でのうがい
	 飲んでは駄目
	 もちろん飲まなかったさ

	 家族以外は面会禁止
	 家族でも3時間に一度5分間のみ
	 白衣、マスク着用のこと

	 ごぼごぼ
	 「なんの音?」
	  と僕は聞いた
	 ごぼごぼ
	 「ポンプの音だよ」
	  と弟は答えた
	 ごぼごぼ
	 「お腹の中身を吸い出しているのさ」
	  と父は答えた
	 じゅー

	 ずたずたな内臓が
	 肝臓をも犯し
	 黄疸で黄色な僕には
	 だれも鏡を見せてくれなかった

	 看護婦さんが何人もかかって巨大な僕のベッドを押し
	 ICUからものすごく狭い廊下やエレベータを上下して
	 CTルームへ向かう
	 長い長い道のり
	 CTは息を止めなくてはいけないから辛い
	 それを数十回も繰り返した
	 その結果が出ると
	 ぼくはもう一度、手術室へ向かうことになった

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